前回のカシワバゴムノキに引き続き、A様邸のシェフレラ(ホンコンカポック)の症例をご紹介したいと思います。
観葉植物としてこちらも人気のある品種で、ウコギ科・フカノキ属の世界中の熱帯・温帯に自生する常緑性の樹木です。
別名ヤドリフカノキ・カポック・ホンコンカポック。
「カポック」「ホンコンカポック」の名前の方が有名かと思いますが、カポックという名前の植物はパンヤ科(アオイ科)のまったく別の植物で、葉が似ているために使われた誤称という裏話があります。
さて本題に入りますが、
A様邸のシェフレラを診ていきましょう。
こちらのシェフレラは独特なフォルムでリビングのソファ脇にシンボルツリーのようにおしゃれに飾られていました。
A様によると、こちらのシェフレラは1ヵ月前にインテリアショップで購入されたとのことですが、葉が徐々に黄色く弱ってしまっていき、太い幹が何本か株立ちしている中でダメになった1本の幹の先端をご自身で切り落としたとのこと。
左側が切り落とした幹で、右側の幹の葉も黄色く変色し始めているのが分かります。
他の幹の葉も色が変わり始めています。
幹全体をチェックすると、ところどころ元々剪定されていた形跡あるのだが、その部分の枝は枯死している状態でありました。
幹にも多数の切り傷があり、自生地での伐採の際にできたものなのか、輸入時にできたものなのかは確認がとれないため定かではない。
根もかなり弱っていることが推定されます。
そしてご依頼主様には見えていませんでしたが、ところどころ虫に侵されていました。
写真がぼやけていてどこに虫がいるのか分からないが、白い小さい虫が所々お散歩している様子が目視で確認できました。
虫を持ち帰ることができなかったため、顕微鏡で細かく確認することはできなかったが、色や形状、模様などから恐らくコナカイガラムシです。
コナカイガラムシとはカメムシ(半翅)目コナカイガラムシ科の白いパウダー状のロウ物質で覆われていることから通常白っぽく見える虫です。
この虫は、寄生した植物の組織に口針を刺して吸汁するときに植物体内に毒素や病原菌を注入します。「甘露」と呼ばれる糖分が多いシロップを葉面に分泌するため、ベトベトとした照りのある膜で葉面がおおわれ、甘露が付着した葉は光合成能力が低下してしまうだけでなく、すす病の発生につながります。
早期落葉や立ち枯れを引き起こすため、放置すると植物が枯れてしまうこともあります。
また、温室に発生すると1年中繁殖が可能となるため、屋内の観葉植物では早期発見・早期駆除が重要となります。
今回のシェフレラは、
購入前から株が弱っていた・コナカイガラムシの発生
という診断結果となります。
治療としては、まず害虫駆除をするためホームセンターでも購入できる浸透性の高い殺虫剤を使用し駆虫処理をしました。
当店で使う殺虫剤は、プロが使うような調合したり希釈するものではなく、ホームセンターでも園芸店でも購入ができ、希釈する必要がないものを選定しています。
なぜかというと、虫の発生というものは風に乗って付着したり、他の植物から付着したり、購入時の土中に卵があったと様々な要因があります。
そのため、今回駆虫したあとにまた発生する可能性があるので、早い段階でお客様自身で駆除できるような商品を選んでおすすめしています。
よほど状態が悪い植物に対しては、当店でお預かりをして強力に殺虫駆除を致します。
そしてこのシェフレラにも液肥が挿してありましたので、それを取り除いて頂いてこちらも1ヵ月の経過観察となりました。
A様ご自身も植物をとても心配されており、お子さんも普段から植物に葉水を施してあげているなど、ご家族でとても植物を気にかけてくださっていました。
そのおかげで今回は手の施しようがないくらいにまで悪くなることもなく、未然に対策ができたのだと思います。
そのように毎日1分だけでも植物を気にかけて視る方が増えてくれることを、私どもは日々願っています。